2025年12月8日、アメリカ・南カロライナ州のリー矯正施設(Lee Correctional Institution)で、ドローンによる奇妙な密輸未遂事件が発生しました。投下された荷物には、生ステーキ、カニの脚、Old Bay調味料、大麻、そしてマルボロのタバコが含まれており、まるで受刑者たちが「サーフ&ターフ(海と陸のご馳走)ディナーパーティー」を計画していたかのような内容でした。
サウスカロライナ州矯正局は、X(旧Twitter)上で#ContrabandChristmas(密輸クリスマス)というハッシュタグとともにこの事件を公表し、世界中のメディアとSNSユーザーの注目を集めました。
押収された密輸品の内容:まるでパーティー用?

刑務所職員が押収した荷物には以下のものが含まれていました:
- 生ステーキ(スーパーのパック入り)
- カニの脚
- Old Bay調味料(アメリカでカニ料理に使われる定番スパイス)
- 大麻2袋
- タバコ数箱(マルボロなど)
- バラタバコ
これらの品物は「Piggly Wiggly」というスーパーマーケットの袋に入っており、ドローン本体も日曜日の朝に押収されました。南カロライナ州矯正局の広報担当クリスティ・シェイン氏は「荷物を待っていた受刑者たちは、きっと『カニカニ』(crabby、不機嫌という意味)な気分だろう」とユーモアを交えてコメントしています。
X(旧Twitter)での反応:「伝説的な試み」と話題に
このニュースはSNS上で大きな話題となり、多くのユーザーが驚きと笑いのコメントを寄せています。
大手メディア「VICE」は「南カロライナ州の刑務所の囚人たちは伝説的なスタントをほぼ成功させるところだった:ドローンがタバコ、ステーキ、カニの脚、Old Bay調味料が入った袋を刑務所の中庭に投下した。サーフ&ターフの宴会に必要な材料がすべて揃っていたのに、看守に見つかってしまった」と投稿し、1.1万回以上の表示を記録しました。
一般ユーザーのJenniferも「南カロライナ州刑務所の看守がドローンによる大麻、タバコ、ステーキ、カニの脚、Old Bay調味料の配達を阻止した」とシェアし、多くの共感を集めています。
John Burkeは「南カロライナ刑務所の看守がドローン配達を阻止!大麻、タバコ、ステーキ、カニの脚、そしてOld Bay調味料!」と驚きを込めて投稿しています。
なぜカニとOld Bay?──アメリカ南部の文化背景
Old Bayは、アメリカ東海岸、特にメリーランド州やバージニア州で愛されるシーフード用調味料です。カニの茹で料理「クラブボイル」には欠かせないスパイスとして知られており、今回の密輸品がこのセットだったことから、受刑者たちが本格的なカニ料理パーティーを計画していたことがうかがえます。
ステーキとカニを組み合わせた「サーフ&ターフ」は、高級レストランでも提供される豪華な料理で、刑務所内では通常味わえない贅沢な食事です。この密輸計画が成功していれば、受刑者たちは刑務所史上稀に見る「豪華ディナー」を楽しめていたかもしれません。
ドローン密輸の深刻化:刑務所セキュリティの新たな脅威

南カロライナ州矯正当局によると、ドローンを使った密輸は近年急増しており、刑務所セキュリティの大きな課題となっています。
かつては刑務所へのコンバンド(禁制品)の持ち込みは、フェンス越しに投げ込む、カタパルト(投石機)を使う、面会時にこっそり渡すといった古典的な手法が主流でした。しかし、刑務所側がフェンスを高くし、上部にネットを張るなどの対策を講じたことで、これらの手法は難しくなりました。
その結果、密輸業者たちはドローンという新たな手段に目をつけたのです。ドローンは夜間でも飛行可能で、正確な場所にピンポイントで荷物を投下できるため、刑務所職員の目を逃れやすいという利点があります。
ドローン密輸の法的リスク
南カロライナ州では、刑務所付近でドローンを飛行させるだけで軽犯罪として最大30日間の禁固刑が科せられます。さらに、刑務所内にコンバンドを投下した場合は重罪扱いとなり、最大10年の懲役刑が科される可能性があります。
リー郡保安官のダニエル・サイモン氏は、2022年の声明で「これらの大型ドローンはますます重い荷物を運べるようになっている。我々はそれらが悪意ある者の手に渡らないよう懸命に取り組んでいる」と警告しています。
過去の刑務所ドローン密輸事件:世界的な問題
ドローンによる刑務所密輸は、アメリカだけでなく世界中で発生している現代的な課題です。
イギリスの事例
2019年、イギリスのリーズ刑務所では、ドローンが携帯電話、SIMカード、USBメモリ、大麻を投下する事件が発生しました。イギリスでは、刑務所へのドローン飛行禁止ゾーンが設定されましたが、密輸は後を絶ちません。
ブラジルの大胆な事例
2013年、ブラジルのサンパウロ州では、ドローンが刑務所に携帯電話、ノコギリ、ドリルなどの脱獄用工具を投下する事件が発生しました。この事件以降、ブラジル当局はドローン監視システムの導入を進めています。
カナダの事例
カナダのオンタリオ州では、2021年にドローンがフェンタニル(強力な鎮痛剤)やタバコを刑務所に投下する事件が発生し、受刑者の過剰摂取による死亡事故につながりました。
刑務所側の対策:ドローン検知システムと電波妨害装置
ドローン密輸への対策として、世界中の刑務所では以下のような技術が導入されています:
- ドローン検知レーダー:敷地内に接近するドローンを自動検知
- 電波妨害装置(ジャマー):ドローンの通信を遮断し、操縦不能にする
- ネット発射装置:物理的にドローンを捕獲する
- 監視カメラの増設:AIによる不審物体の自動検出
しかし、これらの技術には高額なコストがかかるうえ、合法的なドローン飛行や通信にも影響を与える可能性があるため、導入には慎重な検討が必要です。
まとめ:テクノロジーと法執行のいたちごっこ
今回の南カロライナ州刑務所でのドローン密輸事件は、現代のテクノロジーが犯罪の手法にも応用されている現実を浮き彫りにしました。カニとステーキという「豪華な食材」が密輸品に含まれていたことは笑いを誘いますが、その背後には刑務所セキュリティの深刻な課題が存在します。
ドローン技術の進化により、より大型で高性能な機体が安価に入手できるようになった今、刑務所側は常に新たな対策を講じる必要に迫られています。この「テクノロジーと法執行のいたちごっこ」は、今後も続いていくでしょう。
しかし一つ確かなのは、今回の事件で受刑者たちの「カニパーティー」は中止となり、彼らは刑務所の通常メニューで我慢せざるを得なくなった、ということです。


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