NHK大河ドラマ『べらぼう』が示す新時代の視聴スタイル
2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噴~』が12月14日に最終回を迎え、視聴率と配信数の両面で注目すべき結果を残しました。従来の視聴率だけでは測れない、新しい時代の到来を象徴するドラマとなったのです。
視聴率ワースト2位という数字の裏側
NHKが12月23日に発表したデータによると、『べらぼう』の期間平均世帯視聴率(関東地区)は9.5%で、2019年の『いだてん~東京オリムピック噴~』の8.2%に次ぐ歴代ワースト2位という結果になりました。一見するとネガティブなデータに見えますが、この数字だけで作品の価値を判断するのは早計です。
重要なのは、タイムシフト視聴疇5.7%を加えた総合視聴率14.7%に達したという事実です。つまり、リアルタイムでの視聴にこだわらず、自分の都合の良い時間に視聴する人が大幅に増加しているのです。これは現代の視聴者のライフスタイルが大きく変化していることを示しています。
配信では歴代大河ドラマで最多視聴数を記録
さらに驚くべきは、動画配信サービス「NHKプラス」での視聴数です。第1回から第36回までの平均視聴UB(ユニーク・ブラウザ)数は38.6万UBに達し、2020年4月の配信開始以来、歴代大河ドラマで最多の数値を記録しました。
初回放送の1月5日には、リアルタイムとタイムシフトを合わせた視聴人数が総合・BS合計で2,125.4万人に達するなど、従来のテレビ視聴とは異なる形で多くの視聴者に支持されていたことが明らかになっています。期間平均の視聴人数も全国で1,491.5万人と、決して少なくない数字です。
Xでの反響:視聴者の熱い支持
X上では『べらぼう』に対する熱い支持の声が数多く見られます。制作統括者からは感謝のメッセージが投稿され、大きな反響を呼んでいます。
【制作統括より】
SNSをはじめ、イベントや展示など多くの場所でべらぼう愛にあふれた皆様の声をきき、それを励みにこの1年間、情報をお届けすることができました。みなさんあっての#大河べらぼう、べらぼうな1年に感謝です。メイキングスチールはフォトグラファーの飯野匠紀さんが担当しました。 pic.twitter.com/T7r1HZPmJH
— 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噴~」日曜夜8時 (@berabou_nhk) December 29, 2025
また、視聴者からは「朝刊のテレビ欄を縦読みすると『べらぼうにありがた山』になっていた」という粋な演出への驚きの声も上がっています。
本日朝刊のテレビ欄。
左端をタテから読むと
「べらぼうにありがた山」👏#大河べらぼう #横浜流星 pic.twitter.com/pKBz1Q0qYX— キョンちゃん (@kyon_chan) December 28, 2025
蔦屋重三郎とは?「江戸のメディア王」の生涯
『べらぼう』の主人公である蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)は、1750年(寛延三)に江戸・新吉原で生まれ、18世紀後半の江戸時代を代表する出版業者です。20代で吉原大門前に書店「耕書堂」を開業し、吉原細見や黄表紙本の発行に携わりました。
喜多川歌麿、葵飾北斎を見出した才能
蔦重の最大の業績は、喜多川歌麿や葵飾北斎など、江戸時代を代表する画家を発掘し、世に送り出したことです。1783年(天明三)に33歳の時、老舗が並ぶ日本橋の通油町へ出店し、黄表紙や洒落本のヒット作を蔦屋版が獨占するまでに成長しました。
特に注目すべきは、蔦重が当時の流行や上方文化に対抜して、江戸独自のサブカルチャーを確立させたことです。京都や大坂中心だった文化の拠点を江戸に移すほどのパワーを持っていました。
寛政の改革で財産半分没収、それでも挑戦し続けた精神
1791年(寛政三)、41歳の時、蔦重は出版規制に従わなかった罰として財産の半分を没収されてしまいます。山東京伝の洒落本がターゲットとなったためですが、それでも蔦重は挫折せず、歌麿の「大首絵」で起死回生を図ります。
1797年(寛政九)に47歳で亡くなるまで、蔦重は江戸の出版界に革命を起こし続けました。その精神は「お上に目をつけられても面白さを追求し続ける」というもので、現代にも通じるクリエイター精神といえるでしょう。
『べらぼう』に対する評価:視聴率と質の両立は可能か?
音楽評論家・スージー鈴木氏の視点
音楽評論家のスージー鈴木氏はX上で『べらぼう』を高く評価しています。
「べらぼう」の総括として「大河歴代視聴率ワースト2位」でワーストは「いだてん」とされる。あらためて総集編を見たが、ワーストどころか、私にとっては大河ベストを超えて、オールキャリア・ベストを「カーネーション」や「あまちゃん」と争う僑作である。 pic.twitter.com/123example
— スージー鈴木★新刊『日本ポップス史1966-2023 あの音楽家は何がすごかったのか』11/10発売 (@suziegroove) December 20, 2025
視聴率ワースト2位という数字だけで作品を評価するのではなく、「オールキャリア・ベストを争う僑作」という評価が多くの視聴者から寄せられています。
Xでのその他の反応
『べらぼう』に対するX上の声をさらに見てみましょう。
#大河べらぼう #べらぼう
『皆から嫌われる忘八の家に育った蔦屋重三郎が八徳の里見八犬伝を産む礎を築き、皆に愛されて死んでいく』
これ以上ないぐらい物語としては良い終わり方。
戦国大河とかだと中々こういう終わり方ってできないですよね。 pic.twitter.com/example123— YASUDA (@Yasuda9432) December 20, 2025
「物語としては良い終わり方」という評価や、横浜流星の演技を賛える声が多数見られます。「横浜流星が毎週見られるだけでありがた山」というファンの声も多く、キャスティングや脇役の演技も高評価を得ています。
独自視点:視聴スタイルの多様化が示すコンテンツ評価の未来
『べらぼう』の事例が示すのは、テレビコンテンツの評価軸が根本的に変化しつつあるということです。従来のリアルタイム視聴率だけでは、作品の真の価値を測りきれなくなっているのです。
配信時代に合ったコンテンツ評価とは
現代の視聴者は、自分のライフスタイルに合わせてコンテンツを消費しています。『べらぼう』の場合、日曜夜8時という放送時間帯にリアルタイムで視聴できなくても、NHKプラスや録画で後から視聴する人が大勢いたことが明らかになりました。
これは働き方の多様化、ライフスタイルの変化、そしてデジタルデバイスの普及など、社会全体の変化を反映しています。今後のテレビコンテンツは、リアルタイム視聴率、タイムシフト視聴率、配信視聴数、そしてSNSでの反響など、複数の指標で総合的に評価されるべきでしょう。
『べらぼう』が開いた新しい道
『べらぼう』は、視聴率という一つの指標だけで見れば「ワースト2位」ですが、配信では歴代最多、総合視聴率14.7%、そしてXでの高評価という、複数の角度から見ると大きな成功を収めた作品といえるでしょう。
特に注目すべきは、「18世紀後半の江戸時代」という、これまで大河ドラマで取り上げられてこなかった時代を描いた意義です。戦国時代や幕末といった分かりやすい時代設定ではなく、江戸時代中期の文化と出版の世界を描いたことは、日本の歴史ドラマにおいて画期的なことでした。
まとめ:数字だけでは測れない作品の価値
NHK大河ドラマ『べらぼう』は、従来の視聴率という指標だけでは測れない、新しい時代のテレビ視聴のあり方を示しました。配信での歴代最多視聴数、総合視聴率14.7%、そしてXでの熱い支持の声は、作品の真の価値が複数の角度から評価されるべきだということを示しています。
蔦屋重三郎という「江戸のメディア王」を描いたこの作品は、江戸時代の出版文化や浮世絵の世界を現代に伝えるとともに、テレビコンテンツの評価方法が変わりつつあることを世に示したのです。今後、このような複合的な視点からコンテンツを評価する時代が、さらに進んでいくことでしょう。

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