2025年12月1日、「現代用語の基礎知識選 2025T&D保険グループ新語・流行語大賞」が発表され、「オールドメディア」がトップ10入りを果たしました。30,930件ものポストを集めたこの言葉は、単なる流行語ではなく、日本のメディア業界が直面している構造的な変化を象徴しています。本記事では、この受賞が意味するメディア業界の大転換について、技術者・ビジネスパーソンの視点から徹底解説します。

「オールドメディア」とは何か?
定義と特徴
オールドメディア(Old Media)とは、インターネットやSNSが普及する以前から存在する伝統的なマスメディアを指します。具体的には以下の4つが該当します:
- 新聞
- テレビ
- ラジオ
- 雑誌
これらのメディアの最大の特徴は、情報の流れが一方向である点です。発信者から受信者へと情報が流れるだけで、受信者側からのフィードバックや双方向のコミュニケーションは限定的でした。
名付け親は誰か?
「オールドメディア」という言葉を最初に使い始めたのは、環境副大臣の青山繁晴参議院議員です。元共同通信記者で作家でもある青山氏は、14〜15年前にこの言葉を動画サイトで発言しました。
受賞スピーチで青山氏は「私が申した真意とは少し違う」と述べ、「ニューメディアとの対比ではなく、報道の本来の使命が果たせるようにという意味で使った」と説明しました。しかし、時代の変化とともに、この言葉は新旧メディアの対立構造を象徴する言葉として広く受け入れられるようになったのです。
なぜ今「オールドメディア」が流行語に?
SNS時代の情報環境の変化
2025年現在、日本の情報環境は劇的に変化しています。総務省の調査によれば、若年層を中心にニュースの情報源としてSNSを選ぶ人が急増しており、特にX(旧Twitter)、YouTube、TikTokなどのプラットフォームが主要な情報源となっています。
「オールドメディア」という言葉がトップ10入りした背景には、以下の3つの要因があります:
- 情報の即時性への要求:災害や事故、政治的な出来事が発生した際、SNSでは現場の人が直接情報を発信できるため、速報性でオールドメディアを圧倒しています。
- 多様な視点の台頭:オールドメディアは限られた記者や編集者の視点で作られますが、SNSでは一般の人々や専門家が自由に情報を発信できます。
- 検証・分析・考察の重要性の再認識:流行語大賞の選考では「検証・分析・考察する歴史あるメディア」としての価値も評価されました。
メディアリテラシーの重要性
選考委員会は「SNSの熱狂に流されず見分ける力」の重要性も指摘しています。オールドメディアとニューメディアの両方を批判的に見る目が、今の時代には不可欠だという認識が広がっているのです。
オールドメディア vs ニューメディア:徹底比較
メディアの特性を表で整理すると、以下のようになります: 項目 オールドメディア ニューメディア 媒体 新聞、テレビ、ラジオ、雑誌 SNS、YouTube、ブログ、ニュースサイト 情報の流れ 一方向(発信者 → 受信者) 双方向(発信者 ↔ 受信者) 更新頻度 1日1回〜月1回 リアルタイム 参入障壁 非常に高い(免許、資本、設備) 低い(スマホ1台で可能) 情報の信頼性 編集プロセスあり 玉石混交 視点の多様性 限定的 非常に高い 収益モデル 広告・購読料 広告・投げ銭・サブスク
ニューメディアの3つの強み
- 情報の即時性が圧倒的:災害時や速報性が求められる場面では、現場からのSNS投稿がオールドメディアより早く情報を届けます。
- 多様な視点を取り入れられる:YouTubeでは専門家が独自の分析を提供し、公式メディアとは異なる角度からの考察が可能です。
- 双方向コミュニケーション:視聴者・読者からの即座のフィードバックにより、情報発信者も学び、進化できます。
オールドメディアの3つの強み
- 検証プロセスの存在:報道前のファクトチェックや編集プロセスにより、誤情報の拡散を防ぎます。
- 取材力とネットワーク:長年培った取材網と専門記者による深い分析は、SNSでは得られない価値です。
- 歴史的アーカイブ:過去の報道を体系的に保存し、歴史的な文脈での分析が可能です。
ビジネスへの影響:企業の情報発信戦略はどう変わる?

小売・サービス業界への示唆
コンビニエンスストア業界を例に取ると、従来はテレビCMや新聞折込チラシが主要なマーケティング手法でした。しかし現在は、以下のような多層的なアプローチが求められています:
オールドメディア活用:
- ブランド信頼性の構築
- 高齢者層へのリーチ
- 大規模キャンペーンの告知
ニューメディア活用:
- リアルタイムでの新商品情報発信
- インフルエンサーとのコラボレーション
- ユーザー生成コンテンツ(UGC)の活用
- SNSでの双方向コミュニケーション
セブン-イレブンやファミリーマートなどの大手チェーンは、既にこの両輪戦略を実践しています。公式X(旧Twitter)アカウントでの即時情報発信と、テレビCMでのブランド構築を並行して進めているのです。
技術業界における情報発信の変化
IT企業やスタートアップにとって、ニューメディアの活用はさらに重要です。Google、Microsoft、Metaなどの大手テック企業は、公式ブログ、YouTube、X、LinkedInなど複数のプラットフォームで直接ユーザーとコミュニケーションを取っています。
成功事例:
- Notion:コミュニティ主導の情報発信で急成長
- Canva:YouTubeチュートリアルで使い方を啓蒙
- Discord:ユーザーフィードバックを即座に製品に反映
X(旧Twitter)での反応
SNS上では「オールドメディア」の流行語大賞入りについて、賛否両論の議論が巻き起こっています。
肯定的な意見:
- 「メディアの本来の使命を考え直すきっかけになる」
- 「情報の質と速度、両方が大切だと気づかされた」
- 「検証・分析の重要性が再認識された」
批判的な意見:
- 「オールドメディアを一方的に否定するのは危険」
- 「SNSの誤情報拡散の方が深刻な問題」
- 「メディアの二分法は建設的でない」
過去の類似事例:メディアの転換点
テレビがラジオを超えた1960年代
1960年代、日本ではテレビの普及率が急上昇し、ラジオが主要メディアの座から降りました。当時も「ラジオは終わった」という論調がありましたが、実際にはラジオは生き残り、車載ラジオや深夜ラジオなど独自の領域を開拓しました。
インターネットが既存メディアを脅かした2000年代
2000年代初頭、インターネットの普及により「新聞は消える」と言われました。実際、紙の新聞の発行部数は減少しましたが、多くの新聞社はデジタル版に移行し、新たなビジネスモデルを構築しています。
YouTubeがテレビを脅かす2010年代
2010年代、YouTubeの台頭により「テレビ離れ」が加速しました。しかし、テレビ局は見逃し配信サービス(TVer など)を立ち上げ、デジタル時代に適応しています。
共通点:メディアは「消える」のではなく「進化」し、共存の道を見つけてきました。
これからのメディア業界:ハイブリッド時代の到来
オールドメディアの生き残り戦略
- デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進:紙媒体からデジタル版への移行を加速
- SNSとの連携強化:X、YouTube、TikTokなど複数プラットフォームでの情報発信
- データジャーナリズムの強化:ビッグデータ分析を活用した深い報道
- サブスクリプションモデルの確立:質の高いコンテンツに対する課金モデル
- ファクトチェック機能の強化:誤情報対策でのリーダーシップ
ニューメディアの課題
信頼性の確保:誤情報・フェイクニュースへの対策
収益化の安定化:広告依存からの脱却


コメント