2025年11月3日、政府は秋の叙勲で、元総務相であり小泉政権下で経済政策を主導した竹中平蔵氏(74)に「旭日大綬章(きょくじつだいじゅしょう)」を授与すると発表しました。政府は受章の理由として、小泉政権下での不良債権処理や郵政民営化といった「構造改革」を評価しています。しかし、このニュースが報じられるや否や、X(旧Twitter)などのSNS上では、「#竹中平蔵の受章に抗議します」「#叙勲取り消しを求めます」といったハッシュタグがトレンド入り。総エンゲージメントは150万を超える(記事執筆時点)など、大規模な「炎上」状態となっています。なぜ、政府が「功績」と認めた人物の受章が、これほどまでに激しい批判を浴びているのでしょうか?この記事では、以下の3点について深掘りします。
- 竹中平蔵氏が今、批判される「悪行」とは何か?
- 「旭日大綬章」とは何か? 過去の主な受章者は?
- 過去の受章者で、竹中氏と同じように批判された人物はいたのか?
1. そもそも「旭日大綬章」とはどんな勲章か?
まず、今回授与された「旭日大綬章」がどれほど重いものなのかを確認しておきましょう。旭日章(きょくじつしょう)は、日本の勲章の一つです。「国家または公共に対し功労のある者」に授与され、その中でも「顕著な功績」を挙げた人物に贈られます。旭日章は功績の大きさに応じて6つのランクに分かれています。
- 旭日大綬章 (Grand Cordon of the Order of the Rising Sun)
- 旭日重光章
- 旭日中綬章
- 旭日小綬章
- 旭日双光章
- 旭日単光章
(ここに「旭日大綬章」の勲章の画像を挿入してください)今回、竹中氏が受章した「旭日大綬章」は、この中で最高位にあたります。
(ちなみに、さらに上位には「大勲位菊花章」や「桐花大綬章」がありますが、これらは皇族や国家元首クラス、あるいは極めて特別な功績(例:吉田茂氏など)に贈られるもので、通常の「春秋の叙勲」では旭日大綬章が実質的な最高栄誉の一つとなります。)つまり、日本政府として「社会に多大な貢献をした最高レベルの功労者」と公式に認めた、ということに他なりません。
2. なぜ炎上?竹中平蔵氏が批判される3つの「悪行」
政府が「最高レベルの功労」と評価した一方で、SNSでは「悪行」とまで断罪されています。なぜ、これほど評価が真っ二つに割れるのでしょうか。X(旧Twitter)などで特に問題視されているのは、小泉政権時代(2001年〜2006年)に彼が主導した、いわゆる「竹中改革」です。批判の多くは「日本経済の衰退を招いた」「格差社会を固定化させた」という点に集中しています。
批判点①:労働者派遣法の改正(2004年)
最も激しく批判されているのが、この「労働者派遣法(ろうどうしゃはけんほう)」の改正です。
- 改正内容: それまで原則禁止されていた「製造業への労働者派遣」を解禁しました。
- 政府・企業側の論理: 雇用の流動性を高め、企業が国際競争力を保てるようにするため。
- 批判的な見方: この改正により、企業は正社員を減らし、安価で不安定な「派遣社員」で穴埋めするようになりました。これが「非正規雇用」の急増を招き、「ワーキングプア(働く貧困層)」や「ネットカフェ難民」といった社会問題を生み出す温床になった、と厳しく批判されています。
- 現在の影響: 「氷河期世代」の苦境や、現代の若者が「親世代より貧しくなる」という不安感、そして長引く日本の「賃金停滞」の諸悪の根源がこの政策にある、と考える人は非常に多いです。
批判点②:郵政民営化(2005年)
小泉改革の「本丸」とされたのが「郵政民営化」です。
- 政策内容: 郵便、郵便貯金、簡易保険の「郵政三事業」を日本郵政公社から民間の株式会社(現在の「かんぽ生命」「ゆうちょ銀行」など)に移行させました。
- 政府側の論理: 「官から民へ」。約350兆円とも言われた巨大な公的資産を市場に開放し、非効率な公務員組織をスリム化することで、新たな経済効果を生み出す。
- 批判的な見方: 地方の「郵便局」は、金融や物流の「最後の砦」でした。民営化によって採算性が重視された結果、地方の郵便局が統廃合され、過疎地の高齢者などが「金融難民」化する事態を招いたと批判されています。また、「国民の資産が外資に切り売りされただけ」といった批判も根強く残っています。
批判点③:新自由主義と「格差社会」の固定化
上記2つを含む一連の改革は、「新自由主義(ネオリベラリズム)」に基づいているとされます。これは、「市場原理」や「自己責任」を重視し、政府の介入(規制)をできるだけ小さくしようとする思想です。竹中氏の政策は、「企業の利益」や「競争」を最優先する一方で、「労働者の保護」や「社会保障」を軽視したものだったのではないか、という見方です。結果として、「持てる者(大企業・富裕層)」と「持たざる者(非正規労働者・地方住民)」の格差が、この20年間で決定的に広がってしまった——。今回の「炎上」は、この改革によって「人生を狂わされた」「貧困を強いられた」と感じる多くの人々の、長年にわたる怒りや不満が、叙勲という「名誉」をきっかけに一気に噴出したものと言えるでしょう。
3. 過去の「旭日大綬章」受章者まとめ
では、竹中平蔵氏以前に、どのような人物がこの最高位の勲章を受章してきたのでしょうか。旭日大綬章は、主に内閣総理大臣経験者、衆参両院の議長経験者、最高裁判所長官、大企業の経営者(経団連会長クラス)などに授与されるケースがほとんどです。ここでは、比較的近年に受章した、政治・経済分野の著名な人物を一部抜粋してまとめます。(※肩書は受章当時または最盛期のもの)
| 氏名 | 主な肩書 | 受章年 |
|---|---|---|
| 安倍 晋三 | 内閣総理大臣 | 2022年 (没後) |
| 森 喜朗 | 内閣総理大臣 | 2017年 |
| 石原 慎太郎 | 東京都知事 | 2015年 |
| 中曽根 康弘 | 内閣総理大臣 | 1997年 |
| 宮澤 喜一 | 内閣総理大臣 | 1994年 |
| 橋本 龍太郎 | 内閣総理大臣 | 2007年 (没後) |
| 御手洗 冨士夫 | 日本経団連会長、キヤノン会長 | 2011年 |
| 奥田 碩 | 日本経団連会長、トヨタ自動車会長 | 2008年 |
| 豊田 章一郎 | 日本経団連会長、トヨタ自動車会長 | 2007年 (没後) |
※注:安倍晋三氏、中曽根康弘氏は、さらに上位の「大勲位菊花章頸飾」も受章しています。このように見ると、受章者の多くは「一時代を築いた」とされる重鎮ばかりであることがわかります。
竹中氏も「小泉政権のブレーン」として、この系譜に連なる人物だと政府は判断したわけです。
4. 過去にも「批判」された受章者はいたのか?
これが本記事の核心的な問いの一つです。結論から言えば、「はい、もちろん存在します」。ただし、批判の「質」と「規模」が、今回の竹中氏のケースとは大きく異なります。
政治家と批判は「セット」
まず、上記の表を見てもわかる通り、受章者には多くの総理大臣経験者が含まれます。政治家である以上、その政策には必ず賛成者と反対者がいます。例えば、中曽根康弘氏の「国鉄民営化」も、当時は労働組合などから猛烈な批判を受けました。安倍晋三氏の「アベノミクス」や「安全保障関連法」も、当然ながら賛否が真っ二つに分かれています。彼らが受章する際にも、「あの政策を進めた人物に勲章とは何事だ」という批判の声は、常につきまといました。
竹中氏の「炎上」が特異な理由
では、なぜ今回の竹中氏への批判が、過去のそれよりも「炎上」として目立っているのでしょうか。それは、以下の2つの点が特異だからと考えられます。1. 批判が「特定のイデオロギー」ではなく「個人の生活実感」に基づいている点
過去の政治家への批判は、「憲法観が違う」「外交方針が気に入らない」といったイデオロギー(思想)対立の側面が強いものでした。しかし、竹中氏への批判は「あなたのせいで、私の仕事が非正規になった」「あなたのせいで、給料が20年上がらない」という、極めて個人的で、生活に密着した「恨み」や「怒り」に基づいています。
これは、イデオロギーを超えて、広範な「現役世代」「ロスジェネ世代」の共感(あるいは怒り)を呼んでいます。2. SNSによる「可視化」と「即時性」
2000年代初頭の小泉改革の時代は、まだX(旧Twitter)やFacebookは存在しませんでした。批判は新聞の社説や一部のデモで語られるだけでした。しかし2025年の今、当時(あるいは現在進行形で)「痛み」を感じた無数の人々が、スマートフォン一つで瞬時に「#叙勲取り消し」と発信できるようになりました。
150万を超えるエンゲージメントという「数字」は、これまで可視化されなかった国民の不満が、いかに大きく、深く、根付いていたかを証明する結果となりました。
5. まとめ
今回の「竹中平蔵氏 旭日大綬章受章」と、それに伴うSNSでの大「炎上」について解説しました。
- 政府の評価: 「不良債権処理」「郵政民営化」などの構造改革を主導した「功労者」。
- 国民(SNS)の評価: 「労働者派遣法改正」などで非正規雇用を増やし、格差社会を招いた「諸悪の根源」。
- 過去との比較: 過去の受章者にも批判はあったが、竹中氏への批判は「個人の生活実感」に基づく根深いものであり、SNSによってその怒りが爆発的に可視化された。
政府が「功績」とみなすものが、国民にとっては「悪行」と映る——。この受章をめぐる騒動は、日本社会が「小泉・竹中改革」という時代を、そしてその後の「失われた数十年」を、未だに総括できていないという現実を、改めて浮き彫りにしています。今回の受章と批判を、私たちはどう受け止めるべきか。これは、日本の「これから」の経済や社会のあり方を考える上で、非常に重い問いを突きつけていると言えるでしょう。


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